抄録
新しいMacrolide系抗生剤であるTMS-19-Q·GC錠(TMS)の浅在性皮膚化膿症に対する有効性及び安全性をMidecamycin (MDM)を対照薬として二重盲検法で検討した.投与量はTMS 1 日600mg, MDM 1,200mgで比較を行った.
臨床効果検討症例218例 (TMS 群 106例, MDM 群 112例) での最終全般改善度(かなり改善以上)はTMS群82.1%, MDM群83.9%で両薬剤間に効果の差は認められなかった.疾患群別では1群 (毛嚢炎, 膿庖性座瘡) ではMDM群がやや高い改善率を, IV, V群 (蜂窩織炎, 丹毒, 表在性リンパ管炎, 化膿性爪囲炎, 皮下膿瘍, 化膿性汗腺炎, 感染性粉瘤) ではTMS群がやや高い改善率を示した以外はほとんど差は認められなかった.
無酸症が多いと考えられる高年齢層 (60才以上) での臨床効果の比較では, TMS群が有意 (P<0.05) に優れた治療効果を示し,又, S.aureusの感受性菌 (MIC 3.13μ9/ml以下) 分離症例での効果の比較においてもTMS群が優れた成績を示した.本剤は特種な製剤設計がなされ, 既存のMacrolide剤とは異なり, 胃酸の酸度に影響なく消化管吸収を可能にした製剤であり, その特長が臨床面にも波及したと推察された.
副作用はTMS群に6例 (発現率5.0%), MDM群3例 (2.4%) にみられたが, いずれも軽度で問題となるような症例は認められず, 両薬剤間に安全性の面でも差は認められなかった.
以上の成績から, TMSは既存のMacrolide剤とはやや性質を異にした興味ある薬剤であり, その上, 既存Macrolide剤の半量投与で同等の効果が期待でき, 浅在性皮膚化膿症の治療薬として有用な薬剤と考えられた.