The Japanese Journal of Antibiotics
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Miporamicinのラットにおける28日間混餌投与亜急性毒性試験
本山 径子角 明美三浦 昌己矢野 讓次守野 豊彦松本 一彦山本 宏
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1989 年 42 巻 11 号 p. 2422-2446

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抄録

新規マクロライド系抗生物質Miporamicin (MPM) を雌雄ラットに28日間連続混餌投与し, その毒性を検討した。投与濃度を3,200, 8,000, 20,000, 50,000ppmとし, 投与終了後28日間の回復試験も併せて行った。
1. 全試験を通じて死亡例はみられなかった。一般症状ではMPM-50,000群で粗毛及び削痩が観察されたが, 回復試験では, これらの症状は消失した。
2. MPM-50,000群で体重増加抑制並びに摂餌・摂水量の減少がみられた。回復試験では体重増加量並びに摂餌・摂水量の回復を認めた。
3. 検体摂取量はMPM-3,200群で雄273mg/kg/日, 雌288mg/kg/日, MPM-8,000群で雄721mg/kg/日, 雌773mg/kg/日, MPM-20,000群で雄1,738mg/kg/日, 雌1,856mg/kg/日, MPM-50,000群で雄3,405mg/kg/日, 雌3,611mg/kg/日であった。
4. 血液学的検査ではMPM-50,000群で飼料摂取不良に起因すると思われる赤血球数, 白血球数, ヘマトクリット値, ヘモグロビン量及び血小板数の減少がみられた。回復試験では, これらの変化は回復あるいは軽減した。
5. 血清生化学的検査ではMPM-50,000群において, 総蛋白, アルブミン, グルコース及びトリグリセライドの減少を認めたが, いずれの変化も飼料摂取不良に起因するものと思われた。回復試験では摂餌量の回復に相関して, これらの変化は回復あるいは軽減した。
6. 尿検査ではMPM-20,000群ないし50,000群で尿量, 尿電解質及び尿浸透圧の減少ないし上昇を認めたが, いずれの変化も抗生物質投与による盲腸肥大あるいは摂餌・摂水量減少による二次的な変化と思われ, 回復試験では, 摂餌・摂水量の回復及び盲腸肥大の軽減に伴い, これらの変化はいずれも回復した。
7. 肉眼的検査ではMPM-50,000群で削痩に相関した体脂肪減少, 脾臓及び胸腺の萎縮を認めた。又, 投与量に比例して盲腸肥大が認められた。回復試験では, これらの変化はいずれも回復あるいは軽減した。
8. 臓器重量ではMPM-50,000群で飼料摂取不良に起因すると思われる脾臓及び胸腺重量の減少, 更に, 投与量に比例して盲腸重量の増加を認めた。回復試験では, これらの変化は回復あるいは軽減した。
9. 病理組織学的検査ではMPM-50,000群で脾臓に軽度な萎縮がみられ, 被膜の蛇行とリンパ濾胞辺縁部のリンパ球の減少傾向を認めた。更に, 胸腺に萎縮傾向を, 腸管膜リンパ節に傍皮質領域のリンパ球 (T-細胞) の減少傾向がみられた。又, 骨髄に脂肪細胞の増加を認めた。これらの変化はいずれも栄養摂取不良によるものであり, 回復試験では, いずれも回復した。
10. 電子顕微鏡検査では肝臓及び腎臓とも異常は認められなかった。
11. 以上の結果, 本試験における無影響量は低栄養性病変の認められない20,000ppmと推定した。

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