The Japanese Journal of Antibiotics
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呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について(1995年)
池本 秀雄渡辺 一功森 健猪狩 淳小栗 豊子川口 秀明清水 義徳松宮 英視斎藤 玲寺井 継男井上 洋西中舘 俊英伊藤 忠一吉田 武志丹野 恭夫大野 勲西岡 きよ荒川 正昭五十嵐 謙一和田 光一岡田 正彦尾崎 京子青木 信樹北村 亘子関根 理鈴木 康稔松田 正文谷本 普一中田 紘一郎中谷 龍王稲川 裕子可部 順三郎工藤 宏一郎山本 優美子石原 照夫岡田 淳小林 宏行河合 伸高安 聡武田 博明島田 馨山口 惠三松本 哲哉岩田 守弘樫谷 総子伊藤 章住友 みどり賀来 満夫松島 敏春二木 芳人副島 林造安藤 正幸山根 誠久戸坂 雅一河野 茂田中 宏典平潟 洋一松田 淳一那須 勝伊東 盛夫山崎 透中野 忠男斎藤 厚草野 展周當山 真人
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1997 年 50 巻 5 号 p. 421-459

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抄録

我々は1981年以来, 全国各地の病院・研究施設と共同で下気道感染症(以下, 呼吸器感染症と略す)分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~13)。今回は, 1995年度の調査結果を報告する。
1995年10月~1996年9月の間に全国23施設において, 呼吸器感染症患者から採取された検体を対象とした。それらの検体(主として喀痰)から分離され, 起炎菌と推定された細菌567株について感受性を測定した。分離菌の内訳Staphylococcus aureus 74株, Streptococcus pneumoniae82株, Haemophilus influenzae 104株, Pseudomonas aeruginosa (non-mucoid株)85株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid株) 18株,Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis 52株, Klebsiella pneumoniae 25株などであった。主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, ほとんどの菌種で前年とほぼ同様の成績を示した。S.aureusではOxacillinのMICが4μg/ml以上の株(methicillin-resistant S.aureus)が1994年度とほぼ同様の39株, 52.7%を占あた。これらMRSAも含め, ArbekacinとVancomycinは優れた抗菌力を示した。P.aeruginosaに対しては一部の薬剤を除き抗菌力は弱かったが, その他の菌種に対する抗菌力は比較的強いものが多かった。また, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。
患者背景については, 呼吸器感染症患者459例から採取された567株を対象とした。年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上の症例が66.3%を占め1994年度よりわずかではあるが漸増している。疾患別の頻度では, 慢性気管支炎, 細菌性肺炎がそれぞれ38.8%, 29.6%と多く, 全体の約70%を占めた。疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 慢性気管支炎ではH.influenzae及びS.pneumoniaeの分離頻度が高く, それぞれ18.0%, 17.6%であった。細菌性肺炎ではS.aureusとP.aeruginosaの分離頻度が最も高く, それぞれ16.2%, 次いでH.influenzae12.8%, S.pneumoniae 10.6%の順であった。抗菌薬の投与の有無, 投与日数ごとの分離菌についてみると, 投与前に分離頻度の高い菌はH.influenzae 24.7%, S.pneumoniae 21.0%, M.(B.)catarrhalis 13.9%であった。抗菌薬投与14日以内では, 薬剤感受性が比較的良好な菌(S.pneumoniae, K.pneumoniae, M.(B.)catarrhalis)では, 抗菌薬の投与日数の増加に伴い分離頻度が減少する傾向にあったが, 多くの薬剤に耐性を示すS.aureusは投与日数の増加に伴い分離頻度は増加する傾向にあった。感染抵抗力減弱を誘起する因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は「有り」で57.7%,「無し」で35.0%となり, 因子・手術の有りの症例でMRSAの分離頻度が高い傾向は例年通りであった。抗菌薬の投与前後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で34.2%,「投与後」で70.6%となり, 抗菌薬投与後で高値を示した。また, 入院患者からのMRSAの分離頻度は外来患者に比べ多く60.4%(32/53)を占めた。外来患者からの分離頻度は1994年度の7.1%(1/14)に比べ1995年度は26.3%(5/19)と多かった。

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