The Japanese Journal of Antibiotics
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呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について (1996年)
池本 秀雄渡辺 一功森 健猪狩 淳小栗 豊子清水 義徳寺井 継男井上 洋西中舘 俊英伊藤 忠一吉田 武志大野 勲丹野 恭夫荒川 正昭五十嵐 謙一岡田 正彦尾崎 京子青木 信樹北村 亘子関根 理鈴木 康稔中田 紘一郎中谷 龍王稲川 裕子工藤 宏一郎山本 優美子小林 宏行河合 伸高安 聡島田 馨中野 邦夫高森 幹雄横内 弘伊藤 章住友 みどり賀来 満夫松島 敏春二木 芳人安藤 正幸菅 守隆戸坂 雅一河野 茂朝野 和典平潟 洋一泉川 公一山口 敏行松田 淳一那須 勝伊東 盛夫山崎 透中野 忠男斎藤 厚當山 真人山根 誠久草野 展周
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1998 年 51 巻 7 号 p. 437-474

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抄録

1996年10月~1997年9月の間に全国16施設において, 下気道感染症患者449例から採取された検体を対象とした。それらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌557株のうち543株について感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcusaureus 98株, Streptococcus pneumoniae 93株, Haemophilus influenzae 84株, Pseudomonasaeruginosa (non-mucoid株) 84株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid株) 17株, Moraxellasubgenus Branhamella catarrhalis 31株, Klebsiella pneumoniae 21株などであった。
主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, ほとんどの菌種で前年とほぼ同様の成績を示した。S. aureus及びP. aeruginosa (non-mucoid株) に対しては一部の薬剤を除き抗菌力は弱かったが, その他の菌種に対しては, ほとんどの薬剤が比較的強い抗菌力を示した。S.aureusではOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (methicillin-resistant S. aureus: MRSA) が1995年度と比べ約15%増加し, 67.3% (66株) を占めた。これらMRSAについても, ArbekacinとVancomycinは優れた抗菌力を示した。
また, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。
年齢別分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上の症例が71.0%を占め, 1992年以降で最も多かった。疾患別分布では, 1993年以降で増加傾向にある細菌性肺炎, 慢性気管支炎がそれぞれ35.9%, 30.3%と多かった。細菌性肺炎からの分離菌はS. aureusが最も多く24.7%, 次いでP. aeruginosa 17.5%, S. pneumoniae 15.5%が多く分離された。慢性気管支炎ではS. pneumoniaeとS. aureusの分離頻度が高く, それぞれ16.3%, 15.7%であった。抗菌薬の投与の有無, 投与日数ごとの分離菌についてみると, 投与前に多く分離された菌はS. pneumoniae 24.2%, H. influenzae 19.3%, S. aureus 16.3%, P. aeruginosa 12.7%などであった。このうちS. aureusS. pneumoniaeの分離頻度は投与8日以上で日数に伴い減少したが, H. influenzaeP. aeruginosaの分離頻度は投与により一旦は減少するが15日以上になると投与前に比べても高かった。感染抵抗力減弱を誘起する因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は「有り」で77.0%, 「無し」で37.5%であった。抗菌薬の投与前後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で42.6%, 「投与後」で90.2%となり, 抗菌薬投与後で高値を示した。また, 入院患者からのMRSAの分離頻度は74.4% (61/82) と高く, 一方, 外来患者からの分離頻度も31.3% (5/16) を占めた。

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