抄録
犬及び猫の下垂体中間葉の銀好性特殊細胞 (柵細胞) について観察したところを記載した.
この細胞は矢野氏 borax formalin 法によって特に明らかにその全貌が染色される. 2極又は多極の形態をもち, 中間葉細胞索の間隙にあってこれと平行の, 即ち下垂体腔の壁に対して直角の方向をとり, 中間葉内の種々の部分に核を含む細胞体の部分がある. この部分から延びる線維は一方では下垂体腔の壁に終末膨大をもって終わり, 中間葉細胞相互及び中間葉細胞と内腔を隔て, 他方では中間葉後葉の境界に同じく終末膨大をもって終わるが, 時として更に後葉内に進入している.
この細胞は hematoxylin-eosin, iron-hematoxylin, Mallory 氏 phosphomolybdic acid hematoxylin, Bielschowsky-Maresch-Sano 氏格子線維鍍銀法, Gomori 氏 CH-P法, Nissl 氏法, Gros-Schultze 氏及び Bodian 氏神経線維鍍銀法によって染出されない. Azan 染色では線維の部分が淡染し, Severinghaus 氏法及び Del Rio Hortega 氏炭酸銀法には比較的よく染まる.
以上からこの銀好性細胞は結合組織性及び神経性のものではないことが推定され, 中間葉の固有細胞か或は神経膠性細胞の何れかであろうと思われる.
後葉と中間葉の機能的相互関係に何等かの役割を有するかも知れないことも想像される.