抄録
ウマの腹部皮膚における汗腺が電子顕微鏡により観察された. 伊東等 (1961) の光学顕微鏡所見によく一致して, この腺の分泌上皮が2種の異なった腺細胞, 即ち空胞細胞と稠密細胞から成ることが電子顕微鏡によっても明らかにされた. 空胞細胞は分泌上皮の主たる構成員で, 形は円柱形または立方形をなし, 多数の明るい分泌空胞で充たされる. この細胞はよく発達した微絨毛 (microvilli) を有することを特徴とし, その先端はしばしば肥大し, 離断されて分泌物の一部を形成する (微離出, microapocrine 分泌). この分泌物放出機序のほかに, 大きな突起が腺腔内にしばしば突出するのが見られ, これもおそらく細胞体から離断されるであろう (大離出, macroapocrine 分泌). Golgi 装置と粗面小胞体はよく発達し, Golgi 小胞, 同じく空胞と分泌空胞の間には移行と思われる像が認められる.
分泌上皮の第2の細胞型, 即ち稠密細胞は大きさが小さく, 細胞質の電子密度がかなり高い. この型の細胞は大きな球形の糸粒体を含み, 分泌空胞をもたない. 細胞外側面および基底面の形質膜は著しいひだを作るが, 腺腔の微絨毛 (microvilli) は甚だ貧弱である. この細胞の機能に関する考察がなされ, この細胞が分泌細胞の変性型ではないかという可能性も挙げられた.