Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
フォルマリン灌流固定脳における円筒状シナプス小胞の出現
平田 幸男
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1966 年 26 巻 3 号 p. 269-279

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抄録

フォルマリン灌流固定脳を電子顕微鏡で観察すると, オスミウム浸漬固定脳には見られない, 円筒状のシナプス小胞が出現する. この小胞は径240∼300Å, 長さ300∼1000Åで, 終末ボタン中にも, また通過シナプス (Synapse en passant) をつくる神経突起中にも認められる.
この円筒状小胞は, これまで著者が検索した, 嗅球, 大脳皮質, 小脳皮質, 海馬, 中隔部, 手綱核, 外側膝状体背側核, 外側視床枕核, 視床下部視交叉上核および腹内側核, および脊髄前角の何れにおいても認め得たが, その分布, および円筒形シナプス小胞を含む終末の数と, 球形のシナプス小胞をもつ終末の数との比は, 中枢内の各領域によって, 特定の値を示す. 円筒状シナプス小胞をもつ終末は, 細胞体とも, また樹状突起とも, またさらに他の神経終末との間にもシナプス結合をつくるが, これらの場合, シナプス間隙は, 球形のシナプス小胞がシナプス結合をつくる場合に比してやや狭く, またシナプス膜の肥厚も著明でないことが多い. 球形の小胞を含む終末と円筒形の小胞を含む終末とが, シナプス結合を行なう場合は, 一般に球形の小胞を含む終末がシナプス前性 (presynaptic) である.
何故に灌流固定脳においてのみ, この小胞が出現するかを論じ, また灌流固定法について少しく検討を加えた.

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© 国際組織細胞学会
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