抄録
カイウサギ動脈内皮の微細表面構造の研究のため, 新しい潅流および固定法を工夫し, 胸部の大型動脈を走査型および透過型電子顕微鏡で観察した.
1. われわれの走査電子顕微鏡像においては, 動脈の管腔表面は明らかな辺縁ひだ (marginal folds) をもつた内皮細胞により被われており, 内皮下の組織の収縮がなければ, 内皮細胞の形はほとんど多角形で, 特定の方向に細長いということはない.
2. 走査電子顕微鏡によれば, 大動脈洞, 肺動脈洞, 上行大動脈および大動脈弓近位側の内皮細胞表面には, 多数の毛髪状の突起が認められた. これらの突起は, 透過電子顕微鏡により認められる内皮細胞の微絨毛に相当するものと思われる. しかし動脈を冷(2°C) 生理的食塩水で洗ったときには, これらの毛髪状突起は不明瞭となった. この所見は, 突起の敏感な感受性を示唆するものとして興味が持たれる.
3. 上行大動脈, 大動脈弓, 下行大動脈, 総頸動脈, 腕頭動脈および肺動脈には, 1本のヒモ状の突起をもった特徴的な内皮細胞が認められ, これは単一線毛 (single cilium) であると思われる. 内皮細胞に典型的な微細管の構造を有する単一線毛があることが, われわれの超薄切片において証明された.
4. 上行大動脈, 大動脈弓および肋間動脈の分岐部には, 虚血あるいは機械的傷害を避けるための潅流あるいは即時固定法においてさえ, 多数のクレーターを認めた.