Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
人脳皮質視覚領の組織学的研究
折居 一雄
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1954 年 6 巻 4 号 p. 513-524

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抄録

人皮質視覚領の微細構造を見るに, 分子層内には太い神経突起所有の Cajal 氏或は Retzius 氏細胞の如きは見られないが, 微細突起所有の小神経細胞の散在は認められる. 本層は専ら微細神経線維の錯綜に依り占められ, 上層には著明な切線状線維の走行を見る.
第2層には多数の小錐体細胞と僅少の頼粒細胞. 第3層には両細胞相仲ばして存す. 小錐体細胞の上昇性樹状突起は分子層内の微細錯綜線維に移行し, 外側性樹状突起は分岐性終末に終る. 軸索突起は放線により髄質に向う. 顆粒細胞は軸索突起を欠き, 微細な樹状突起は周囲の微細錯走線維に移行する.
第4層は巨大及び中等大の星状細胞 (Meynert) を含み, Gennari 氏線条に依り3亜層に分けられる. 上下両亜層は専ら顆粒細胞と著者の大核細胞とから成る. 中層内には多数の星状細胞が見られるが, 其巨大型の数は甚だ少い. 星状細胞の樹状突起の発達は甚だ良好, 各分枝は長く伸びて尖鋭状に終る. 軸索突起は髄質に向う. 然し小型の星状細胞には軸索突起の証明されないものが甚だ多い.
第5層には著明な水平線維の進入を見, 小錐体細胞, 大核細胞, 並に下層には所謂巨大錐体細胞の存在を見る. 然し此巨大細胞は錐体状を示す事は極めて稀で, 丸味のある多角細胞で, 其樹状突起の走行及び終末状態は第四層内の巨大星状細胞に於けると同様である. 夫故此細胞も知覚性のものと思考される.
第6層は表層の中型錐体細胞層と深層の中型紡錐細胞層とから成り, 両細胞の軸索突起は髄質に向う. 永平線維は表層に少く, 深層に多い.
放線は専ら小錐体細胞からの軸索突起と髄質からの求心性線維とから成る Gennari 氏線条及び第5及第6層内の水平線維は専ら求心性線維であり, 其終末は遊離性に終る.

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© 国際組織細胞学会
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