抄録
森林斜面の透水性の異方性を評価する目的で,降下火山灰堆積物からなる斜面上で直径15.5cm,高さ10cmの不撹乱試料を重力方向に連続的に採取し,縦・横2方向の飽和透水係数(Kv,Kh)を測定した。試験の結果,降下火山灰堆積物からなる森林斜面土層に異方性が存在することを確認した。多くの場合Kh>Kvであった。粗孔隙量の少ないほど透水異方性は顕著であった。粘土質の下層土でもクロボク表層土でも,pF1.5〜2.0の孔隙量とそれより粗い粗孔隙量の関係が異方性の大きさを左右することを見出した。また,粘土質の下層土の場合土粒子の配向構造がKh>Kvの異方性に関係していること,クロボク表土層では下層植生であるチマキザサの根の発達形態もKh>Kvの異方性に影響していることを見出した。