アプライド・セラピューティクス
Online ISSN : 2432-9185
Print ISSN : 1884-4278
ISSN-L : 1884-4278
血糖低下作用の予測因子として投与前6か月間のHbA1c情報を用いる際の最適な補間方法に関する探索的検討
佐藤 弘康 蝦名 勇樹村上 智香石田 陽美津田 雅大田中 悠季三本松 泰孝田村 広志
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 16 巻 p. 25-35

詳細
抄録

糖尿病治療における有効性指標としてHbA1cが広く用いられており、その重要な予測因子の1つに投与前HbA1cが挙げられている。今回、DPP-4阻害薬が単剤療法として導入された糖尿病患者を対象として、投与前6か月間のHbA1c情報を用いる際の最適な補間方法を探索するために、投与前HbA1c情報と3か月後のHbA1c情報との関連性を調査した。 221名を調査した結果、投与直前HbA1cと最も良い相関を示したものは、投与後HbA1cの実測値(相関係数0.59)であり、変化差および変化率よりも高い相関係数であった。一方、投与後HbA1cとの相関を種々の投与前HbA1c情報を用いて比較した結果、投与直前値1点よりも投与前6か月間のHbA1c情報を用いた場合に高くなる傾向が確認された。最も高い相関係数を示したのは、投与前HbA1c情報を後向きに補間した方法(相関係数0.62)であった。 HbA1cには個体内変動が存在する。投与前HbA1c情報において、投与直前1点よりも6か月間における複数回の情報を利用した場合に、投与後HbA1cとより高い相関が得られた。これは、個体内変動の影響を縮小できたためと考えられる。また、その中でも後向きに補間する方法が最も高い相関を示したことは、HbA1cが過去1~2か月の血糖状態を示す指標であることからも矛盾しない。本研究は、DPP-4阻害薬の投与前HbA1c情報を単変量解析した探索的調査であるが、HbA1c低下作用の予測因子として、投与前6か月間のHbA1c情報を後ろ向きに補間する方法が有用である可能性を示した。

著者関連情報
© 2021 日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
前の記事 次の記事
feedback
Top