失語症研究
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シンポジウム
CO中毒症例に見る高次機能障害の経過
—炭鉱爆発事故後の30年間の経過—
志田 堅四郎松本 富枝内田 忠
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1996 年 16 巻 2 号 p. 163-171

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抄録

    炭塵爆発で急性一酸化炭素中毒に罹患した比較的重症の24例を30年間観察した。受傷時平均年齢36歳である。 10年後から20年後まで軽快傾向を示したが,20年後から30年後までには加齢も加わって,悪化してきた。 30年後の平均年齢は66歳である。 しかしその悪化は4ヵ月後の程度を越えない。
    この4ヵ月後の程度を越えて悪化してきたときはCO中毒以外の合併症を併発した可能性があった。後遺症の程度は急性期の意識障害の持続時間に相関した。症状の回復では,より高次な機能の回復は遅れ,病巣に関連する症状は残りやすかった。より低次な症状は早く固定した。
    症状の悪化は残存症状に関連して起こった。また日常生活で絶えず体験的に自己の誤りに気づきfeed backの効く症状は治りやすく,効かない症状は治り難く,また悪化する場合もあった。

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© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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