失語症研究
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原著
電子機器による音声誘導で問題行動が減少したアルツハイマー病患者の1例
安田 清三須 直志岩本 明子中村 哲雄
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2002 年 22 巻 4 号 p. 292-299

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抄録

痴呆症患者の問題行動に対する工学的な支援はほとんど試みられていない。今回,あるアルツハイマー病患者の外出などの日常の問題行動に対して,電子機器による音声指示の有効性を検討した。第1期は ICレコーダーによる自動出力,第2期は ChatBox の手押しによる好機嫌時の随時出力を行った。音声指示は担当 STの声で録音した。その結果,外出行動は消失,服薬などの日常行動の誘導にもよく応じた。趣味活動として描画を指示したが,その月別描画枚数は,音声指示前の 10倍になった。本症例は性格温厚で,医療職などの専門家の指示には応諾するという社会儀礼的な習慣が維持されていた。そのため家人の指示にはなかなか応じなかったが,STの指示には従順に従ったと推察した。痴呆患者に対する電子機器による支援の有効性が示唆された。

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© 2002 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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