失語症研究
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原著
左後大脳動脈閉塞症により失読失書を呈した1例
下村 辰雄鈴木 孝輝高橋 暁
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1989 年 9 巻 4 号 p. 285-291

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抄録

左後大脳動脈閉塞症により失読失書を呈した1例を報告した.症例は53歳,男性,右利き.神経心理学的には失読失書,色彩失語を語めた.失読は中等度で,運動覚促通の効果は認めなかった.失書は重度で,自発書字,書取,写字ともに障害されていたが,写字障害は他に比較すれば良好であった.発症1ヵ月半頃には失読と写字障害は改善し,失書と色名呼称障書のみとなった.この経過中,脳血管撮影では左後大脳動脈閉塞を語めたが, CTscan では左視床,面貌線冠に小梗塞巣を認めるのみであった.発症54日目出血性ショックとなった後,左後頭葉内側面から側頭葉にかけて新たに梗塞巣が出現したが,神経心理学的には著変は見られず,失書,色名呼称障言のみが後遺し,以後3年間継続している.本例は左後大脳動脈灌流域,特に左側頭葉の障害により失読失書を呈したが,症状の経時的検討より失読と失書が異なる機構で生じている可能性があると推察された.

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© 1989 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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