水産増殖
Online ISSN : 2185-0194
Print ISSN : 0371-4217
ISSN-L : 0371-4217
原著論文
クロウミウマ稚魚の成長に与えるワムシ給餌密度の影響
金子 誠齋藤 寛秋山 信彦
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 63 巻 4 号 p. 409-415

詳細
抄録

クロウミウマ稚魚の遊泳力とワムシ密度の違いによる摂餌数と成長速度を調べた。ワムシ密度を高くすると稚魚の吸引摂餌回数が増加し,稚魚は最大で1時間に32回の吸引行動をとった。また1回の吸引で最大6.4個体のワムシを摂餌していた。タツノオトシゴ類は吸引摂餌行動することが知られていることから,吻部の前方にある餌を海水とともに吸い込むことで複数個体のワムシを同時に摂餌できることが明らかとなった。したがって,ワムシ密度を高くすることで稚魚のエネルギー収支効率が良くなり,成長が速くなると考えられた。また,産出直後の稚魚の遊泳力は10.6±4.0 mm/s で15日後でも10.3±3.4 mm/s とほとんど変わらなかった。一般に魚類は成長に伴って遊泳速度が速くなるが,本種の浮遊期の稚魚では遊泳力が乏しく,低いワムシ密度では摂餌効率が悪く,稚魚の成長が悪いことが明らかになった。

著者関連情報
© 2015 日本水産増殖学会
前の記事 次の記事
feedback
Top