2017 年 65 巻 2 号 p. 161-163
本研究では,宮城県における東日本大震災前後のサケ稚魚放流数と親魚来遊数の結果を比較することで,震災がサケの回帰に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2010年度と2011年度の稚魚放流数は,震災の影響を受けて減少した。その後に回帰した2014年度と2015年度の親魚数が,以前より減少した一方で,回帰率は低くならなかった。これらのことから,2010年級群の来遊数減少は,稚魚放流数の減少が影響したためと考えられる。また,震災の影響によって,2010年級群の放流数が2009年級群から大きく減少した河川のみならず,放流数が大きく減少することのなかった河川でも,2010年級群の捕獲数は2009年級群より減少した。このことには,震災後,津波により倒壊した堤防等施設や瓦礫などの影響が考えられる。