水産増殖
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原著論文
光周期がクロマグロ仔魚の生残,成長,および摂餌に与える影響
久門 一紀田中 庸介石丸 千紗子阪倉 良孝江場 岳史樋口 健太郎西 明文二階堂 英城塩澤 聡萩原 篤志
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2018 年 66 巻 3 号 p. 177-184

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抄録

クロマグロの種苗生産では,飼育初期の夜間に仔魚が水槽底に沈降し,大量死するため,安定して高い生残率で飼育することができなかった。本研究では,光周期がクロマグロ仔魚の生残,成長,および摂餌に与える影響について小型水槽と大型水槽で検証した。
小型水槽では,500 l 水槽6面に各5,000尾の1日齢のクロマグロ仔魚を収容し,14L:10D(対照区)と,24L:0D(全明区)の光周期で8日間飼育した。生残率は全明区(15.5±7.6%)の方が対照区(1.8±0.6%)よりも約9倍高く,全長は全明区の方が大きかった。消化管内のワムシは,対照区では夜間ほとんど認められなかったが,全明区では常に認められた。次に,大型水槽(40 kl)2面を用いて,14L:10D(対照区)と,24L:0D(全明区)の試験区をそれぞれ1水槽ずつ設定し,10日間飼育した。成長に差は認められなかったが,生残率は全明区(29.3%)が対照区(3.1%)より約10倍高く,クロマグロの初期飼育では全明飼育が有効であることを確認した。

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© 2018 日本水産増殖学会
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