2020 年 68 巻 1 号 p. 1-8
シシャモの資源量をより簡便かつ正確に把握するため,ホールマウント免疫染色法を用いたシシャモ仔魚判別技術の開発を行った。シシャモ人工種苗を抗原としてポリクローナル抗体を作製し,キュウリウオ人工種苗懸濁液による吸収操作を行った。その後 IgG 精製し,アルカリフォスファターゼで標識した。この標識抗体を用いて人工種苗に免疫染色を行ったところ,シシャモ仔魚とキュウリウオ仔魚の判別が可能となり,操作手順の簡略化とコスト削減に成功した。また,新釧路川における天然仔魚調査を行ったところ,調査中期以降仔魚の体長は徐々に小さくなった。開発した免疫染色法と16S rDNA 遺伝子の塩基配列解析による種判別から,調査前・中期ではシシャモ仔魚,後期ではキュウリウオ仔魚が多数を占めた。両手法は両種の存在比について近似した傾向を示したことから,免疫染色法はシシャモ仔魚の資源量調査において,効果的な手法となると考えられた。