2020 年 68 巻 1 号 p. 43-50
新潟県柏崎市で漁獲されたヒゲソリダイを親魚として養成し,自然産卵で得られた受精卵を用いて,500 l 黒色ポリカーボネート製水槽で種苗生産を試みたところ,孵化後31日目で2,760個体(体長約17 mm)の生産に成功した。孵化後8日目に死亡個体が増加したが,これは早朝の光環境の急変によって仔魚が奔走する行動に起因すると考えられた。餌料系列は,L 型ワムシの後にシロギス活卵を給餌する方法であったが,活卵への嗜好性が弱かったことから餌料系列の検討が必要と考えられた。親魚養成期間に,9℃台および29℃台の水温が1ヶ月間続いたが,衰弱する個体はなく,高温,低温に強い魚種と考えられた。また,スレなどの傷に強かった。産卵水温は23℃から26℃の範囲で,成熟・産卵リズムは非同時発生型・多回産卵と考えられた。あわせて,種苗生産を通して得られた本種仔稚魚の形態発育を記載し,既往知見と比較した。