水産増殖
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原著論文
コケゴカイ(環形動物門:ゴカイ科)の性成熟過程
上野 綾子山本 智子
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2020 年 68 巻 1 号 p. 65-73

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抄録

日本沿岸に普遍に分布する多毛類コケゴカイ Simplisetia erythraeensis(環形動物門:ゴカイ科)について,鹿児島湾の思川河口に生息する個体群を対象に,性成熟のプロセスとその季節変化を調査した。組織切片では,卵母細胞と精母細胞が別々の個体で見られ,卵母細胞が体腔で観察されたため,本種は雌雄異体であり,雌は卵巣を持たず体腔内で卵形成を行うことが明らかになった。雌の性的成熟は2つの段階(F1 と F2)が確認され,F2 は核,卵黄,および粗面小胞体様構造を有する事が確認された。F1 は3月から8月に,F2 は雄が精母細胞を持つ7月から8月に発生し,特に7月は出現率が高かったことから,繁殖期のピークは7月であることが示唆された。また,性的に成熟した雌と雄は筋肉層の大部分を消失していた(生殖変態)ことから,本種は1回繁殖でエネルギーの大部分を費やすと考えられる。さらに,成熟した雌は生殖変態した疣足を有していなかった為,本種は生殖群泳をしないであろうと示唆される。

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© 2020 日本水産増殖学会
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