水産増殖
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原著論文
水槽実験における底質環境が黄ウナギの潜砂行動におよぼす影響
松重 一輝望岡 典隆
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2020 年 68 巻 2 号 p. 129-138

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抄録

黄ウナギが砂底に潜る際の行動(潜砂行動)を実際に観察可能な水槽実験を実施し,底質環境の違いによる潜砂行動の変化を検証した。平らな砂底(粒径約1 mm)のみ,ならびに砂底上に砂利(長径約60 mm)を1つ配置した底質条件と比べて砂底上に砂利を5つ配置した底質条件では,魚体を激しく振って砂底に穴を掘る掘削の段階を伴う潜砂行動の回数が少なく,潜砂行動1回あたりの掘削の継続時間も短かった。潜砂行動が成功して砂に隠れられる確率は,砂底上に砂利を1つあるいは5つ配置した底質条件と比べて平らな砂底のみの底質条件で低かった。さらに,黄ウナギは砂に潜り始める際に砂利や砂利の重なりに吻を押し当てて,容易に潜砂するための基質として利用することが示された。以上の結果から,黄ウナギが河川内で石や砂利の多い底質環境に高密度で分布するのは,単調な砂泥底よりも潜砂行動,とくに掘削に要する時間を短くできるためだと考えられた。

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© 2020 日本水産増殖学会
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