2020 年 68 巻 3 号 p. 221-234
クルマエビの種苗生産に用いる交配済みの野生のクルマエビの雌は容易に入手できないため,ウイルスの影響の少ない人工種苗と親エビの養成が行われているが,人工飼育下におけるクルマエビの繁殖システムは詳細に調べられていない。本研究では,クルマエビの脱皮殻と精莢を用いマイクロサテライト DNA 多型解析を行い個体識別することで人工飼育下におけるクルマエビの繁殖生態の一端を明らかにした。4つのタンクで行われた飼育試験において,脱皮間隔は20-40日であり雌雄差はなく,雌の脱皮殻の57%-77%に交尾栓および精莢がみられた。また,雌の脱皮間隔は,精莢の有無による影響はみられなかった。オスとメスが同じ個体だけでなく異なる個体とも交尾しており,クルマエビにおける複数父性の存在が明らかとなった。