2020 年 68 巻 3 号 p. 293-299
アカハタ人工種苗における鼻孔隔皮欠損標識の有効性を検討するために,欠損個体の出現率と長期飼育における標識の持続性と成長・生残を検討した。10回行った種苗生産における稚魚の鼻孔隔皮欠損率は29.2~91.4%であったが,飼育環境水と S 型ワムシの栄養強化に SV12 を使用した生産事例では約90%であった。鼻孔隔皮欠損個体と正常な個体を満2歳まで飼育したところ,鼻孔隔皮欠損個体は長期追跡が可能であり,両者に成長と生残率の差は認められなかった。一方,アカハタの鼻孔隔皮は全長約12 mm までに完了し,この段階で鼻孔隔皮が形成途上の個体はその後も形成されないまま成長すると考えられた。以上のことから本種の人工種苗に発生した鼻孔隔皮欠損は放流効果調査に用いる標識として有効と考えられた。