水産増殖
Online ISSN : 2185-0194
Print ISSN : 0371-4217
ISSN-L : 0371-4217
原著論文
超音波テレメトリーを用いたタイ国ケンカチャン湖におけるメコンオオナマズ1歳種苗の行動モニタリング
横山 綾子荒井 修亮三田村 啓理西澤 秀明光永 靖山根 央之Thavee Viputhanumas
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 69 巻 4 号 p. 237-244

詳細
抄録

メコンオオナマズ Pangasianodon gigas は東南アジアに分布する世界最大級の淡水魚である。河川開発や乱獲により野生個体は絶滅の危機に瀕している。タイ国では資源増強のため30年以上にわたって0歳と1歳の人工種苗が地元の湖に放流されてきた。しかしながら,資源増強のためには極めて重要である放流後の人工種苗の生息地利用や行動パターンは,これまで明らかになっていなかった。過去に我々が実施した0歳魚の生息地利用や行動パターンに関する超音波テレメトリー研究に続き,本研究では1歳魚4尾の生息地利用や行動パターンを超音波テレメトリーで調べた。本論文の目的は,これら4個体の移動パターン,水平分布,日周移動について記載することである。記録期間はそれぞれ,57,24,350,12日であった。4個体のうち3個体は記録終了までに何らかの理由により死亡した,または漁業者により混獲されたと考えられる。調査個体は,放流後は湖全体を利用した。その後,利用する水域は徐々に減少した。顕著な日周移動は見られなかった。これらの移動と水平分布,日周移動は過去に報告された0歳魚と同様であった。これらの情報は資源増強にむけて極めて重要である。本研究は4個体のみの結果であることから,今後は十分な実験個体数のもとにあらためて研究をおこなう必要がある。

著者関連情報
© 2021 日本水産増殖学会
次の記事
feedback
Top