1985 年 33 巻 3 号 p. 166-171
八丈島産フクトコブシを1983年11月18日~1984年10月29日および1984年9月7日~12月19日までの2回, 種々の水温条件下で飼育し, 生殖巣の退行と成熟の過程について検討した結果, 次の諸項が明らかとなった。
1) 生殖巣退行後の高温飼育によって, 天然の産卵期 (10月) より4カ月早く採卵することができた。
2) 生殖巣が一度退行した後に成熟が開始された。
3) 生殖巣の退行時に低温で飼育した場合, その後の成熟が促進され, 産卵する個体の割合も高かった。
4) 低温飼育によって人為的に生殖巣を退行させることが可能であった。
5) フクトコブシにおいてもエゾアワビなどと同様, 周年採卵の可能性が考えられる。