抄録
1) ニジマスの三倍体と二倍体との間で, Leitritz給餌100%飼育による分離・混合飼育による成長試験を行ったところ, 二倍体と三倍体との混合飼育区では16週問目から差が出はじめ, 20週間後には二倍体平均体重18.62±0.21 (SEM) gに対して三倍体は17.38±0.22gになった。分離飼育区では逆に三倍体の成長が二倍体に優る傾向があった。
2) 1: 1混合飼育区をさらに2区設定し, それぞれにLeitritz給餌率の50%, 30%の飼料を同様の給餌条件で与え続けたところ, 給餌量を減ずるほど二倍体と比較した三倍体の成長劣化の程度が顕著になることを観察した。
3) 混合飼育条件下での空腹時のニジマスの二倍体と三倍体の摂餌量の差について様々な給餌率のもとで検討した。Leitritz給餌率100%区では, 統計的に有意差はないものの三倍体の摂餌量は二倍体よりも少ない傾向にあり (二倍体7.83mg/gBW, 三倍体14.21mg/gBW) , 給餌量をさらにLeitritz給餌率の30%, 10%と減ずると三倍体の摂餌量は二倍体のそれに比べて有意に少ない結果となった。
4) 三倍体の血漿中の成長ホルモン含量は二倍体との間に有意な差は認められなかった。
5) これらのことから, 二倍体との混合飼育による三倍体の成長が劣る原因は, 三倍体が二倍体との摂餌競合に敗れるためであり, 給餌量を減ずれば減ずるほど二倍体に対する三倍体の成長が劣る現象が早期から出現し, しかも顕著になることが明らかになった。