抄録
シマアジ産卵親魚におけるウイルス性神経壊死症(VNN)の原因ウイルス(SJNNV)の増殖に及ぼす多回産卵や産卵飼育要因(ホルモン(HCG)注射および水槽への収容密度)の影響について検討した。その結果,いずれの産卵親魚群においても産卵回数が増加するとともに血漿コルチゾール濃度が上昇し,産卵後期(産卵回数として10回以上)に生殖腺からSJNNVおよび血漿中から抗SJNNV抗体が検出されるようになった。また,排卵誘発を目的に使用されるHCG注射や親魚の水槽への高密度収容も,コルチゾールの上昇に裏付けられるようにストレッサーとなり得ることが判明した。したがって,産卵親魚の多回産卵,HCG注射および高密度収容は,シマアジのVNNを防除する上で重要な飼育要因であることが示唆された。