2002 年 50 巻 2 号 p. 137-142
1991~1995年にサクラマスの生息域である神通川とその河口付近の海域において, サツキマスの出現状況を調べた。神通川ではサクラマスに混ざって多くのサツキマスが漁獲された。漁獲されたサツキマスの尾叉長分布は21.5~44.0cmの範囲にあり, サクラマス (43.5~70.0cm) に比べ著しく小さいことから, 海域での回遊期間は短く, その回遊範囲は狭いと推定された。神通川では尾叉長62.0cm, 体重3.2kgの大型サツキマス個体が漁獲されたことから, サクラマスとの交雑の可能性が示唆された。神通川の河口付近の海域で漁獲されたサツキマス・サクラマス全体に占めるサツキマスの割合は5力年では6.9~14.6%であった。同海域におけるサツキマスの尾叉長分布は16.0~46.0cmの範囲にあり, サクラマス (13.0~72.0cm) に比べ有意に小さい側に分布した。神通川のサクラマスの魚体の大きさを維持し, サクラマス資源を増大させるためには, 神通川に生息するサツキマスを排除し, さらなるサツキマス幼魚 (アマゴ) の侵入を防ぐ手だてを実施する必要があると考えられた。