水産増殖
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シオミズツボワムシの大量培養における増殖停滞の機構に関する研究
小磯 雅彦日野 明徳
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2002 年 50 巻 2 号 p. 197-204

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抄録

植え継ぎ式大量培養における増殖停滞の発生機構を知るために, 培養日数を3, 6, 9および12日とした4個の水槽を用意し, 各培養事例におけるワムシの増殖状況や培養水の水質, また仔虫を個体レベルで飼育したときの生活史パラメータを調べた。各培養事例での日間増殖率は, 培養3日目に比べて培養6, 9日目では大幅に低下し, 培養12日目では負に転じた。また, 初産卵までの時間と以後の産卵間隔も6, 12日目では長くなり, 12日目ではふ化率の低下と仔虫および親虫の死亡も起こっていた。これらの現象が個体群における増殖の停滞を招いていると考察されたが, 溶存態と思われる何らかの阻害物質が, 従来報告のある非解離アンモニアと同様に増殖阻害の原因物質になっていることも示唆された。なお, 増殖阻害要因は, 親虫世代のみならず次の仔虫世代の生活史パラメータにまで影響することが示された。植え継ぎ式培養では, ワムシ類は対数増殖期を過ぎて定常期に収獲されることが多く, その場合, 生理的活性や餌料としての質の低下が避けられないものと考えられた。

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