2007 年 55 巻 2 号 p. 237-243
愛媛県におけるオオクチバス個体群の遺伝的多様性と分化の程度をマイクロサテライトDNA多型により評価した。オオクチバスの遺伝的多様度は個体群により異なり, 平均ヘテロ接合体率 (期待値) は, 0.231から0.487であった。各個体群のアリル型およびアリル頻度より個体群の遺伝的構造の解析を行ったところ, 愛媛県におけるオオクチバスは個体群ごとに異なった。野村ダム湖の2003年個体群と2004年以後の個体群において, 顕著な遺伝的差異が示された。また, 遺伝的類似性と地理的距離との間に関係が見られない個体群がいくつか見られた。このようなことから, 現在愛媛県に生息しているオオクチバスの分布には, 最近においても移植放流による人為的影響が関与している可能性が示唆された。本研究により, マイクロサテライトDNA多型はオオクチバスの遺伝的多様性とその変化を評価するための標識として有効であることが示された。