1960 年 8 巻 2 号 p. 95-102
1) 恒温動物に対する麻痺毒として知られていたイソメ毒は, 魚貝類に経口的に与えた場合は無害であるが, 飼育水中に加えると飼育動物に強い麻痺作用が起こる。
2) 飼育水中に加えたイソメ毒の毒性は, pHの値に大きく支配され, アルカリ域では毒性を示すが, 酸性域では殆んど無毒となる。
3) イソメ毒はイソメの体表部組織中のみに含まれ, 他の部分には存在しない。
4) イソメ毒はイソメの死後速かに体表にしみ出るが, 生時に分泌されるようなことはない。
5) ゴカイ, イトメ, クロイトメなど他の多毛類中にはイソメ毒のような毒は検出されない。
6) イソメ毒とフグ毒とを比較すると, 前者は恒温動物に対しても, 飼育水に加えた場合は魚貝類などの変温動物に対しても, 麻痺作用を示すが, 後者は相当量を飼育水中に加えても魚貝類に対しては麻痺作用を示さない。