2010 年 49 巻 p. 162-170
本稿では, (1)著名な心理学者, 神経生理学者, 理論物理学者による脳とこころの関係に関するいくつかの問題提起について検討した。その結果, 脳とこころは, 同一事象の異なった形式でのあらわれであるという立場から, こころの脳への局在性の問題を, (2)モジュラリティ説対勾配説の論争, (3)自閉症において脳の結合性が低いという特徴, (4)こころの理論の脳的基礎に関するfMRI研究の成果を通して紹介し, (5)最後に, 自己あるいは他者のこころの状態を理解する上で, 右半球のセルフレファレンス機能が, 重要な役割を果たしていることが議論された。