教育心理学年報
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IV 教育心理学と実践活動
グループワークトレーニング
—ラボラトリー方式の体験学習を用いた人間関係づくり授業実践の試み—
津村 俊充
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2010 年 49 巻 p. 171-179

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抄録

 いじめ, 不登校, 学級崩壊, 子どもの自殺, 暴力行為など, 人間関係に関わる深刻な問題が起こり, 学校教育現場においては児童・生徒の人間関係力を育成することは喫緊の課題になってきている。本稿ではまず, 人間関係力の育成に関わるいくつかのグループアプローチを紹介しながら, 筆者が学校教育現場で支援しているラボラトリー方式の体験学習(experiential learning using the laboratory method : ELLM)によるグループワークを用いた人間関係づくりの授業の基本的な考え方を紹介し, 学校教育現場での実践とその成果を報告している。
 成果として, 質問紙調査によると, 児童・生徒の「クラスへの満足度」「クラスへの協力度」への認知は, 中学校2・3年生においてELLMによる人間関係づくり授業実施多数群が少数群よりも有意に高まっていた。また, 愛知県下のO中学校では, 全校あげてELLMによる人間関係づくり授業実践に取り組み, 必ずしもELLMによる授業効果と断定はできないが, 問題行動発生件数や不登校生徒数などに著しい減少傾向が見られている。さらに, ELLMによる授業に取り組んだ教師を対象にプレポスト調査を行った結果, 「教育への自信」および「子ども中心の教育観」因子の得点が高まりが見られた。
 学校教育におけるELLMを用いた人間関係づくり授業実践は始まったばかりであり, 引き続き実証的な実践研究を行いながら, ELLMを用いた授業の効果性の検討を行っていく必要がある。

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© 2010 日本教育心理学会
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