抄録
実践に取り組んできた研究者という立場から, 不登校支援の実践現場と研究者の連携に関わる諸問題を分節化し問題提起的に論究した。第1に, 方法論上の前提となる問題として, 「現場」と「連携」という用語の概念と実践研究の方法論を含め3つの離陸点を設定した。第2に, そうした視点から, 研究と教育機関(実践現場)の間にある問題群について整理し, 総合性という「つなぎ」の必要性, 連携やネットワークに内在する問題, 研究者と実践者の関係の3点について, 理論的考察を加えた。第3に, そうした理論的文脈に立ち, 実践現場から生成する具体的問題の中から, 研究者に求められる課題がどのようなものであるのかを, 具体的な事例をもとに考察し, それらの研究枠組みの試論を例示した。その結果, 研究者と実践現場との連携における諸課題を乗り越える思考枠として, 関係とプロセスに焦点化してアプローチする視点が浮かび上がった。そうした〈関係・プロセスアプローチ〉の方向性は, 研究者と実践現場との連携を深化させていく可能性があることが導かれた。今後の課題として, 一人の研究者における内なる連携について簡単な考察を行った。