教育心理学年報
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VI 教育心理学と実践活動
学校(と地域)における虐待予防と介入
数井 みゆき
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キーワード: 子ども虐待, 予防, 介入, 学校, 地域
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2011 年 50 巻 p. 208-217

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抄録

 被虐待児の特徴として, 情動調節がうまくいかないことや社会的な関係で不利益を受けやすいこと, また, 学力の低下や常習的な学校のさぼり, 暴力行為や犯罪などへの加担など, 学業や学校生活の問題だけではなく人生そのものが破壊されてしまうこともある。また, 早期に通告されて, 親からの分離という措置によって里親家庭や児童養護施設に移ることが, 学力の低下をもたらし, 学校適応を阻害することも報告されている。すでに北米では, 学校(や地域)で予防教育が 1970 年代から多数行われているが, 被虐待児の家庭背景は多くの場合, 片親家庭で貧困や人種問題, 地域の危険性など複雑である。そのため, 子どもや家庭, 学校を含む包括的な介入の実践が行われてきた。特に, 1991 年から準備が始まり, 現在も追跡が行われているカナダ, オンタリオ州政府の全面援助と協力による地域全体のつながりの構築を含むプロジェクトは不利な条件にいる子どもの発達に対して大きな効力を生み出している。子どものいる家族だけではなく, 様々な立場にある近隣住民を引き込みながら行った予防的介入プロジェクトから, 学ぶことは非常に大きい。対症療法では, 子どもは救われないのである。

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© 2011 日本教育心理学会
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