2012 年 51 巻 p. 33-41
本稿の目的は, 対象期間(2010年7月~2011年6月)に発表された人格(パーソナリティ)特性に関する心理学領域の研究を概観し, その動向や研究成果について論じることであった。特性的要因については, 精神的健康や対人関係などの適応に関連する状態的変数の規定要因として扱われているものを中心に概観し, 研究手法については質問紙調査によるものを対象とした。本稿で概観した研究では, パーソナリティ全体ではなく, 適応に影響する個別の特性を取り上げており, 適応への影響やプロセスを検討する上で, 生物学的パーソナリティ理論に基づく気質, 特性の下位分類の把握や類似概念との比較などの観点が重視されているものが多く見られた。このような観点からの検討は, 特性的要因を考慮した介入の示唆を与えるとともに, 特性的要因と適応との関連が先行研究により一貫していない理由について貴重な示唆を提供する可能性があると考えられる。最後に, 概観した研究において提示された介入の観点について整理した。