2012 年 51 巻 p. 53-62
本稿の目的は, 2010年7月~2011年6月の1年間における教授・学習研究の動向を概観し, 今後の展望を考察することである。教育実践に取り組む教師にとって有益な研究という観点から, この1年の研究を (1) 児童・生徒の実態, (2) 動機づけ, (3) 教育活動の方向性, (4) 指導方法・授業教材の開発, (5) 教師の実態および学習や成長の5つに分け概観した。今後の展望として, 以下の2点が指摘された。すなわち, 教育実践に貢献するためにも, 採用される理論や研究対象の統合が必要であること。また, 教育実践に根差した形あるいは教科に密着した形で研究を行う必要性があること, である。研究の概観と展望を通して, 教育心理学研究が教育実践へと貢献する1つの方向性を提示した。