2013 年 52 巻 p. 34-45
本稿は,日本の人格心理学領域における研究のレビューを目的とする。過去一年間の研究動向をみると,検討すべき以下のような問題が浮上した。第一に,ほとんどの研究が尺度を用いるか尺度の開発をしており,パーソナリティに関する諸概念を検討する研究やパーソナリティ理解の枠組みを提供する理論的研究がわずかしかみられず,このバランスの悪さは解消すべきものと思われる。第二に,類似した尺度が乱立しているため,各尺度の特徴を明確にし,それらを体系化する必要がある。第三に,尺度の恣意的な使用を防ぐために,特定の尺度を用いる理由を明示することが必要と考えられる。第四に,因子分析に基づいて無数のパーソナリティ概念がつぎつぎに提起されるが,それぞれの違いが理論的に検討されていないという問題がある。最後に,統計的有意性が過大評価されがちであるため,得られたデータの意味づけに関するガイドラインを確立する必要がある。