2015 年 54 巻 p. 57-70
本稿では,自ら考え,対話しながら,新たな解を生み出し,学習場面を離れても利用できることを目指す「21世紀の新しい学び」について考察することを目的として,2013年7月からの1年間に刊行された教育心理学とその周辺領域の諸研究,著書,報告書等に見られる教授・学習・認知領域の研究動向,トピックス,成果,今後の課題等について概観し,考察した。そのため,関連する研究を,自律的な学びに関する研究,協同的な学びに関する研究,思考力・表現力を育てる学びに関する研究,創造的な学びに関する研究に分けて検討した。新しい学びに直接言及していない研究にもその萌芽を見いだし,その視点から検討することを試みた。これらを総合し,学習者の内発的動機づけや学習のプロセスを重視し,自分とは異なる意見にも耳を傾けることを促し,他の場面への学習の転移や発展にも目配りするといった,自律,協同,創造を統合した教育研究に加え,教育現場と研究機関による協働的な取り組みを拡大することが新しい学びの形成につながるのではないかという結論に至った。