教育心理学年報
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I わが国の教育心理学の研究動向と展望
乳幼児・児童期の発達研究の動向と展望
—— 「社会的な関わり」に着目して ———
木下 孝司
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2016 年 55 巻 p. 1-17

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抄録

 本稿は, 2014年7月から2015年6月までの1年間に発表された, 日本における乳幼児期と児童期を対象とした研究を概観したものである。主に取り上げた研究は, 『日本教育心理学会第57回総会論文集』『教育心理学研究』『発達心理学研究』『心理学研究』『Japanese Psychological Research』で発表されたものである。日本教育心理学会第57回総会において, 乳幼児・児童の社会的発達に関する研究発表が比較的多かった。また, 子どもを取り巻く社会的問題との関係で, 全体に社会的発達への関心が高いことから, 本稿では「社会的な関わり」に着目した。それぞれの研究を, 社会的な関わりそのものの発達, 社会的な関わりを通した自己形成, 社会的な関わりを介した認知と学習の3つのカテゴリーに分類してレビューを行い, それぞれにコメントをした。最後に, 子どもの発達を社会・歴史的文脈でとらえることの重要性を述べて, 子どもの貧困問題などの社会的現実と向き合うことで, 発達理論を再考する必要性を論じた。

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© 2016 日本教育心理学会
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