教育心理学年報
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III 教育心理学と実践活動
自己愛をめぐる実践研究と実証研究の交差
―理解と支援のための仮説モデル構築にむけて―
川崎 直樹
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2019 年 58 巻 p. 167-184

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抄録

 自己愛の問題を抱えた人への理解と支援は,教育を含む対人援助の領域において重要な課題である。その研究の主流は実践事例に基づく理論的研究であったが,近年は実証的な知見も増加しつつある。本稿では自己愛に関する実践的な研究と実証的な研究の双方を概観しながら,理解や支援への示唆を探ることを目的とする。実践事例に基づく精神力動論的な議論から自己愛的なパーソナリティ構造に関する見解が提起されている一方で,DSMに基づいた臨床群対象の研究や,一般的なパーソナリティ特性に関する研究は,それを検証したり,簡略化したり,異なる視点を提供したりしている。それらを概観しながら,自己愛的な自己システムにある矛盾やその統合の過程,二者関係の中で生じる対人的・感情的な過程についての議論が行われた。

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© 2019 日本教育心理学会
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