2019 年 58 巻 p. 92-101
本稿は,2007年の特別支援教育の開始以降,わが国の教育心理学的研究がどのようなエビデンスを提供してきたのかについて,エビデンス・レベル分類(案)による概括を行うものである。2007年以降に学会誌に掲載された585本の研究論文について,研究デザインを基にしたエビデンス・レベル分類を行った。論文発表数としては「自閉症スペクトラム障害」と「発達障害全般」が多かったものの,「聴覚障害」「言語障害」「ADHD」のエビデンス・レベルが高かった。「自閉症スペクトラム」及び「発達障害全般」に関する研究は,シングル・ケース・デザインに基づくものが多いため,これらの研究に対してシステマティック・レビューを行うことでエビデンス・レベルを高めていくことが考えられた。さらに2007年以降は「通常の学級」をフィールドとした研究が多く発表されており,エビデンス・レベルも比較的高かった。一方,「特別支援学級」をフィールドとした論文は少なく,これからの取り組みが期待される。結果として,教育心理学的研究が特別支援教育の有益なエビデンスを提供していることが示唆された。