教育心理学年報
Online ISSN : 2186-3091
Print ISSN : 0452-9650
ISSN-L : 0452-9650
報告1プログラミングの理論における問題点
東 洋
著者情報
ジャーナル フリー

1964 年 3 巻 p. 89-93,127

詳細
抄録

以上のような検討を要約して, 私は次のように考える。プログラミングの技術の発達, 特に枝わかれ法の発達は, プログラム学習が当初のスキナーの理論の枠の内にはとどまらないようになることを示すであろう。しかしながらそれはプログラム学習が基礎的な学習理論とたもとをわかつてしまうことを意味するものではない。スキナーの学習理論は, 高次の目標体系をもたず, 媒介過程や論理的操作の発達していない学習者を想定している。そしてこの理論は小学校の下級生およびそれ以下におけるプログラム学習および成人においても動機づけの弱い場合, 反応習慣の形成だけを目標とするような場合にはかなりよく適合するものだと思う。しかしより複雑な口標体系と, 進んだ媒介機能や論理的操作とをもっ者に関しては, スキナーの, 或は一般に行動主義学習理論の特色をなす習慣形成の理論だけでは不十分になつてきて, そこに, さまざまな問題が生じてきたわけである。しかしながら, 学習心理学の趨勢はS-R理論と認知理論との統合, 情報理論や決定理論の包摂へとむかいつつある。そしてプログラミング技術の進歩もこのツァイト・ガイストのもとにおこりつつある現象であり, 使いようによつては生まれ出てくる学習理論への好個のテスト手段ともなると考える。

著者関連情報
© 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top