抄録
本論文は, 教育心理学が事例研究に基づく臨床教育心理学に脱皮する必然性と方法を論じたものである. 教育は人間一人一人の自己創造を支援するいとなみであり, 教育心理学はその支援のための心理学的知見と方法を提供する科学である. ただし, その科学は自然科学ではなく, 人間科学を意味する. ところで, 人間の特質を掲げるならば, それは主体的存在, 独自的存在, 創造的存在, 歴史的存在, 社会的存在, 超越的存在, 意味的存在であり, それらを統合した全体的存在である, ということになる. そのような特質を有する人間を正しく理解し, その自己創造を支援する方法は, 当然ながら, 一人一人において異なる. すなわち, 教育心理学は, 従来の人間一般の法則の樹立と, 一定の教育方法の方式を求める科学ではなく, 一人一人の事例研究を主軸とした科学に転換すべきである.