日本の臨床心理学は心理療法やカウンセリングの成果について量的なデータを持っていない。これはつクライエントの心理的症状について量的な記述をほとんどおこなわないためである。こうした点を克服するために, 科学者-実践家モデル (Scientist-Practitioner Model) の視点からいくつかの提案をした。第1に, 心理療法の成果について実証にもとつくアプローチを提案した。実証にもとつく臨床心理学の良いモデルとしては, アメリカ心理学会の心理的治療のガイドラインや, 実証にもとつく医学をあげることができる。実証にもとつく臨床心理学は, 臨床心理学とその関連領域が共同研究をおこなうための基本的なフレームワークとして機能しうる。第2に, 分類, 実施手順, テストバッテリの視点から心理アセスメントのスキーマを提案した。心理アセスメントを実施する際には, 受理面接・詳しいアセスメント・事例の定式化・治療仮説の形成・治療効果のポストアセスメントを含むべきである。第3に, 異常心理学を確立させることを提案した。異常心理学は臨床心理学とアカデミックな心理学のインターフェースとして機能する。