教育心理学年報
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学校危機への対応-予防と介入
瀧野 揚三
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2006 年 45 巻 p. 162-175

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抄録

学校における事件・事故について, 学校の安全を守るための取り組みや危機時に対応するための取り組みが注目されている。学校の危機管理には, 未然に事件・事故を予防するために学校が取り組むリスク・マネジメントと, 事件・事故の発生直後からの被害の最小化と, 早期回復のための取組みとしてのクライシス・マネジメントがある。事前の準備は, 安全管理と安全教育の実施, 危機管理体制の整備による予防である。多くの児童生徒が生活する学校場面では, 事件・事故の心理的影響は広範にわたる。回復に際し, 時間経過とともに個人差が大きくなり, 対応は慎重でなければならない。そのため, 対応にあたる教師, 保護者, 心理職の援助者には, トラウマ反応とその対応についての知識が必要であり, 心理教育が重要な役割を果たす。中・長期的なケアのためには, アセスメントが重要である。介入の具体例として, 学校における大規模な事件後の対応, 危機介入の実践について報告した。また, 再発防止のための取組みとして, 校内危機対応チームの活動におけるシミュレーション研修について紹介した。今後, 学校危機への対応は予防と介入という観点からますます取り組まれていくものと思われる。予防のための取り組みでは, 児童生徒が主体になる新た防災教育や, 人間関係の良好な学校環境の整備を目指すことを期待したい。また, 介入や研修の効果について研究面から検討が必要であること, 研究の裏付けのある実践が必要であることを指摘した。危機対応において, 教育心理学や学校心理学からの貢献が求められていること, 学校心理士の活躍の可能性が示された。

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© 日本教育心理学会
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