本稿では,「働くこと」に接続する学習理論とその応用実践の動向を次の3つの視点から検討する。第1に, ガードナーを中心とした知能,創造性の再定義と, その2つをつなぐ才能教育実践。第2に, 学習を実践コミュニティへの参加とした正統的周辺参加論が教育実践と職業実践をつなげる可能性。第3に, 総合的学習で用いられるポートフォリオ評価が教育実践と職業実践をつなげる可能性。この3つの視点からの検討を通じて, 心理学が「働くこと」につながる教育実践に貢献するためには,学習心理学領域の構成概念の再定義, 教育実践と職業実践をつなぐ分析単位の利用,教育活動の目指す価値と指標の再検討が必要であることが示された。
