教育心理学年報
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僻地社会の変動と児童生徒の人格発達
教育的環境条件の改善変化を中心として
岡路 市郎在竹 隆星野 喜久三松下 覚福島 正治
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1968 年 7 巻 p. 44-66

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抄録

北母子里小中学校にガイド・システムを導入して, 人間関係や指導方法の改善を図ったのであるが, これを実施した前後各1回, および研究の終った2年後に1回と 計3回, 子どもの発達的変化を評価測定した結果を要約 すると次のようになる.
1) 標準学力テストでは, 37年度より, 39年度の方がよくなっている. 成就指数で比較しても後の方が高くなっていて, 学力が充実したと見ることができる.
2) 人間関係において, 子どもの相互の心理的距離は接近し, 相手から好かれているとの自信感が高まってきた. しかし, このシステムを採用しなくなったあとは, この傾向が後退している.
3) 要求不満度は, この実践を通して減少していった.
4) 土地への愛着度が高まってきた.
5) 子どもの生活に重要だと思われる6つの概念の意味空間が好ましい方向に移動してきた.
6) 教師, 有識者, 青年各層の部落観は, 民主性, 合理性, 能動性において改善されているという方向に変化してきた.
さて以上のような変化が, ガイド・システムの実践によるものかどうか確かめることはできない. しかし, この教育実践の時期を境に, 母子里の子どもと, その住民の社会的風土は大きく変ってきたということは言えるだろう.

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© 日本教育心理学会
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