1979 年 28 巻 10 号 p. 732-737
スギ花粉症の起因花粉は空中飛散数の年次的な変化が著しく, 患者数も年により増減が著しい.本研究では, スギ花粉飛散数を早期に予測する目的で, スギ花芽分化期の気象要因の詳細な検討結果と実際の花粉飛散数とを比較検討し次の結果を得た.1) 7月の平均気温が平年値より1℃あるいはそれ以上高い時には翌年のスギ花粉飛散総数は著しく増加した.2) 7月の平均気温が平年値より高いが1℃以上高くない時には翌年のスギ花粉飛散総数は増加し, 平年値より低い時には逆に著しく減少した.3) スギ花粉飛散総数が少なかった年の7月の平均気温が平均値よりは高いが, 1℃以上高くない時には翌年のスギ花粉飛散総数は著しく増加した.4) 前年7月の降水量および花粉飛散期間中の降雨状態とスギ花粉飛散総数との間には関連が認められなかった.以上のことから, 7月の平均気温が翌年のスギ花粉飛散総数を左右する大切な要因であることがわかった.