1980 年 29 巻 9 号 p. 816-826
ラットの胸腺細胞をウサギに免疫して作製したATSを, in vivo, in vitroでラット腎組織と反応させ, 蛍光抗体法で観察した結果, 糸球体mesangiumと胸腺細胞の間に共通する抗原の存在が認められた.ATSの吸収試験によつて胸腺細胞と脳のhomogenateは, この抗体を吸収することが明らかとなつた.しかし, リンパ節細胞, 脾細胞では吸収効果はあまり認められなかつた.この分布様式は, 近年ラットにおいても存在が明らかとなつたThy-1・1抗原と一致するので, 抗AKR胸腺細胞C3H(抗 Thy-1・1 C3H)血清をラット腎と反応させた結果, mesangiumと反応し, 共通する抗原はほぼThy-1・1抗原であると考えられた.しかしpoly-clonalな抗体では抗原決定は困難なので, hybrid myelomaによつて作られたmono-clonalな抗Thy-1・1抗体によつて確認したところ, 共通する抗原はThy-1・1であることが決定された.ATSをラットに静注することによつてmesangium細胞の変性, 崩壊が認められ, その後しだいにmesangium細胞, matrixの増生を主体として増殖性の腎炎を呈した.